- π PI Ⅱ -【BL】
俺はヒロジをぎゅっと握り締めたまま、ちょっと困惑気味の視線で桐ヶ谷を見つめた。
「いいんじゃない?それでも」
桐ヶ谷が頭上に広がった真っ青な空と同じだけ爽やかな笑顔を浮かべる。
だけどすぐにちょっと眉を寄せると、
「でも、俺は結婚してるからお前には気持ちが返せないけど…。浮気はしない主義だし。ましてや不倫となると…」
う゛~ん…と桐ヶ谷が腕を組み、首を捻る。
「ちょっと待て。それって結婚してなきゃ俺の方を見てくれるってことか??」
俺がちょっと手を上げると、桐ヶ谷は目をぱちぱち。
「…え?いや…」
「そうゆうことだよな!俺、諦めなくていいってことだよな!」
「いや。俺、あいつと離婚するつもりはないし…今のところ(←注:超小声)」
「今のところってことは、そうなる可能性もあるってことだよな!」
「なんっ…!聞こえてたのかよ!!お前の耳はデビルイヤー(地獄耳)かっ!!」
デビルイヤー…お前、古いこと知ってンな。
ってそんなことどーでもいい!
桐ヶ谷が喚いて、さっと逃げ出そうとする背中に、
「俺!!諦めないからなーーー!!!」
俺は懇親の力を振り絞って叫んだ。
桐ヶ谷がびっくりして振り返ったその顔は、うっすらと桜色をしていた。
「バァカ」
照れ隠しなのか桐ヶ谷が唇を尖らせ、それでもばっさりと否定はされなかった。
拒絶もされなかった。
走り去る細い背中を見て、俺はヒロジをぎゅっと抱きしめた。
口の開いたラッピングの袋からほんのり石鹸の香りが漂ってきて、
桐ヶ谷―――やっぱ、ラブ!♪♪♪
男だとか、女だとか―――俺にはそんなこと関係ない。
俺は桐ヶ谷がたとえ女であろうと恋に堕ちていただろうし、男だとしても問題Nothing!
不道徳?マイノリティ?
上等だ!
あの円周率野郎には負けねぇぜ!!!
~三好くんの憂鬱 END~