- π PI Ⅱ -【BL】
蜘蛛女はにっこり微笑みながら、
「電話」と一言呟いた。
俺が目を細めると、その数秒後に蜘蛛女の革のジャケットからケータイの着信音が流れてきた。
「なるほど。お前がありとあらゆるコンピューターの中に侵入できるメカニズムが分かった。頭に埋め込まれたチップが電磁波をキャッチしてたってわけか」
「ご名答♪」
蜘蛛女がジャケットの中からケータイを取り出す。
通話ボタンを押して、スピーカーをONにすると蜘蛛女はケータイを手のひらに乗せて通話をし始めた。
『№5、そろそろ時間よ。いつまでそのイケメン刑事と話してるの?』
聞き慣れない女の声が聞こえてくる。
俺たちの様子を知っている……ってことは、この近くに居るのか?
俺はキョロキョロと辺りを見渡して、屋上の手すりから下を覗き込むと、一台の青いインプレッサが目に入った。
その車の前に髪が短い女が立っていて、こちらに向かって手を振っている。
「タリスマンったらせっかちねぇ」
蜘蛛女はくすくす笑って、「今行くわ」と愛想よく答えた。
タリスマン……コードネームか。蜘蛛女の仲間……
「ヒロはとうとうあたしの申し出に首を振ってくれなかったことが残念だけど、今は大人しく退散するとするわ。次の依頼も入ってるし。
また次の機会に~♪」
「ヒロに近づくな!」
シャーっと歯をむき出して威嚇すると、蜘蛛女はまたも楽しそうに笑った。
「あんたってホント変わってるわね。
一つ教えてあげる。
ヒロの目にあたしがあんたに似ているって映ったわけ」
「何だよ」ぶっきらぼうに聞くと、
「ヒロがそう望んでいたからよ―――」