- π PI Ⅱ -【BL】
「フランス産の70年ものだぞ~?♪キャバクラのドンペリより高いぜ?」
なんて言ったけど、はて??こいつってキャバクラ行ったことあるのか?
「あるよ。3年ぐらい前、忘年会の二次会とかで上司に無理やり連れていかれた」
ヒロはつまらなさそうに口を尖らして、それでもワイングラスに口を付けた。
「楽しくないよ。そりゃ女の人はみんなきれいだったけど、何を話したらいいのか分からないし。俺はノリノリの上司が羽目外さないように、隣でハラハラしてた」
ヒロは女に対して奥手だな。合コンとかも苦手とか言ってたし。
ま、そゆうところも好きだったりするけど~♪
ちなみに風俗とかもないな。何せこいつの性欲の無さは保障(?)付き。
「あ、でも。あれはあるよ?」
「あれ?」
俺が聞くと、ヒロは上目遣いでちろっと俺を見つめてきた。
く…この仕草っ!俺はこの視線にとことん弱い。
この目で見られたらどんな爆弾発言でも許してしまいそうだ。
ヒロはちょっと考えるように視線を泳がせて、やがてまたも俺の目を見て、
「ワンナイトラブって言うヤツ?一晩限りの……酔った勢いでってのは経験ある。もちろん結婚する前の話だし、彼女が居ないときね」
ワンナイトラブ?ふっ。俺様のあらゆる武勇伝に比べりゃ可愛いもんだぜ♪
「お前とのはじまりもそんな感じだし~??目覚めて男のベッドだったってのははじめてのことだったからビビッたぁ」
ヒロはふわふわと笑う。
まぁ確かにあのときのヒロは、彼女にフられたばかりでハートブレイク中だったが。
怒ったり悲しんだり、思い出を懐かしんで笑ったり、とにかくころころ変わる表情が
―――可愛かった。
ヒロは当時、企業の業務上横領の件の重要参考人で、俺は探るためにヒロに近づいたわけだが―――
仕事そっちのけ。
全力でものにしたくなった。
―――――と言うわけで、手始めに、ヒロを家に持ち帰ってみた。