- π PI Ⅱ -【BL】
「男だとか女だとかは気にしない性質(タチ)でね。気に入ったヤツは全力でモノにするのが俺様クオリティーだ」
そう言いながらヒロのワイシャツのボタンに手を掛けると、ヒロは抵抗してくるかと思いきや、目をぱちぱちさせて、
「かっこいいな~」
と一言。
またも俺様のハートをえぐるような一言に、心臓が口から飛び出る思いをした。
こいつ…無意識なのか、それとも計算なのか。
とにかく人を喜ばせる術に長けている。
俺はヒロの首に口付けを落とすと、ヒロが甘い吐息を漏らす。
「……変な気分…」
とくすぐったそうに笑う声が聞こえて、
いや……計算じゃないな。こいつは素だ。俺はそう直感した。
拒否されそうなのに、ギリギリのラインでこいつは俺を受け入れてくれる。
その思考は正常なのか、異常なのか最早自分自身でも理解できてないのだろう。
頭は良さそうなヤツなのに、感情は酷く脆くて危なっかしい。
その危ういアンバランスさに―――引きずり込まれる。
ヒロの首からは爽やかな石鹸の香りがほんのり香ってきて、俺はその香りを自分の香りで満たしたくなった。
俺の香りに溺れて、俺だけしか見なくなればいいのに。
その夜―――俺はヒロを抱いた。
ヒロとのはじめてのセックスでは、こいつは俺の腕の中で酷く熱っぽく甘い―――
まるで甘ったるい砂糖のような、それでいて気を抜くといつでも俺の腕からすり抜けていくような危険を孕んだスパイシーな体を
俺はゆっくりと味わうように、抱きしめたんだ。