- π PI Ⅱ -【BL】
「あばよ。また明日な」なんてにやりと笑って、
ブーン
車は急発進した。
さっきはちょっとムカついたけど、何かあいつ可哀相……
手を伸ばして車の方を呆然と見つめる陣内に、俺はちょっとだけ同情した。
「それはそうとヒロ。さっき言った言葉は本当か?」
「さっき…?」と聞きかけて、はっと口を噤んだ。
「“周を想う気持ちは誰にも負けない!”って、こ・と・ば♪嬉しすぎて倒れそうになっちまったぜ」
もういっそ、そのまま倒れててください。
俺は今恥ずかしすぎて顔が上げられん。
「ヒロ~愛してるぜ~♪」
両手を広げて飛びついてくる周に、俺はぎょっと目を剥いた。
「ま、前!前見ててクダサイ!!」
―――
――
「あー…危うく死ぬところだったぜ…」
ため息をつきながらマンションに到着すると、
「俺は愛するヒロと二人で死ねれば本望だ♪」なんて周がとんでもないことを言い出す。
「いえ、勘弁してください。少なくとも水族館に行くまでは死んでもらっては困る」
言ったあとで、はっとなった。
「ほぉ♪お前は俺様と水族館に行くことをそんなに楽しみにしてくれているのか。可愛いやつだな」
なんて言って頭を撫で撫で。
もう反論する余地なし。
ま、いっか。こんなヤツを好きになった俺が悪いんだから。
そう思ってリビングの扉を開けた。