- π PI Ⅱ -【BL】
ガチャッ
扉を開けると、周の香りでない、ふわりとあの大人っぽい香りが漂ってきて、
俺たち二人はその場で固まった。
「Hello~♪」
リビングのソファの真ん中に座って優雅に足を組んでいた女が、にこやかに手を振っている。
さっきの謎の女だ。
「「な、何故居るーーーー!!!」」
俺と周の声がきれいに重なって、俺たちは顔を見合わせた。
はじめてだぜ。周と、この言葉が被ったのは。
いっつも対、周だからな。
ってそんなこたぁどーでもいい。
「し、周この人知ってるのか?」
俺が勢い込むと、周は忌々しそうに眉間に皺を寄せ腕を組んだ。
「さっき話したろう?俺の天敵、女郎蜘蛛だ。お前どうやってここに入った」
周の問いかけに女の人はうっすらと微笑み、俺の方を見た。
「彼からちょっとばかり拝借したの」
え!?俺?俺、鍵なんて渡してないし…なんて思って慌てて胸ポケットに手を当てる。
周は額を押さえながら、
「ヒロ、掏られたな」と低く唸った。
「え!掏られた!?いつの間に…」
「手癖が悪くてごめんなさいね♪」女はにっこりと微笑して
「返すわ」と言い、愛鍵…もとい合鍵を周に投げた。
周が空中でキャッチしたときに、俺は思い出した。
「そー言えば!あのときゴミがついてたって!!」
「そうゆうこと♪」
女の人は白い歯を見せて、にこやかに笑った。