- π PI Ⅱ -【BL】
小説やドラマでしか聞いたことのない単語が飛び出してきて、俺は今度こそ倒れそうになった。
な、なんでうちに国際的な指名手配犯が!?
「し、周!捕まえなくていいのかよ!」
指名手配犯と言い切った彼女はそんな凶悪犯に見えない容姿と態度だけど、それでもやっぱり居心地の良いもんじゃない。
「無駄だ。この女を悦ばすだけだ」
「悦ばす…?」
「そうなの。あの手錠がガチャッて自分の手首で響いたときの快感♪取調べと独房に入れられたときの痺れそうなシチュエーション♪それを一通り経験し終えてから、逃げ出すときはもう最高♪」
こ、この変態ぶり…
かなりの美女なのにもったいない。中身がこれじゃな。
激しく誰かと被るぜ。
「お前のお仲間か。さっさと帰ってもらえ」
俺は周の肩を叩いて、白い目でこいつを見た。
「この変態女と俺を一緒にするな」
「そうよ~あたしだってこんな円周率野郎と一緒にされたらたまんないわ。それにまだ目的が果たせてないし」
女は唇を尖らす。
「目的って?」周は探るように目を険しくさせて、そして隠すように俺の前に立ちふさがった。
「あらぁ。勘がいいじゃない。そうよ。あたしヒロのことをあなたから奪いにきたの」
―――っへ!!?
「あたし、写真を見てヒロに一目ぼれしたの♪退屈させないわ。こんな円周率野郎なんて捨てて、あたしと行きましょうよ」
ち、ちょっと待てーーー!!!