- π PI Ⅱ -【BL】
はじめての嫉妬


周が前を向いたまま俺の手首を握ってくる。


「ふっ。やっぱりお前の目的はそれか。№5の香りを嗅いでから、何となくそんな予想はしてたがな。昔から俺と好みが被るから警戒してたが」


「話は早いわね。ヒロ、あたしにしない?退屈させないわよ」


いやいやいや…今でも充分退屈してないです。


「あのさ…気になってたんだけど、あんたたち随分親しそうだね。どーゆう知り合い?」


おずおずと質問すると、周はぐりんと振り返って、くわっと目を開けた。


目が「聞くな」と語っている。


こ、怖えぇよ。


「付き合ってたのよ。昔ね」


変わりに女の方がさらりと答えてくれた。


「は、はぁ!?」


そーだった!


周は男だけじゃなく女もイケるんだった。まぁ俺も、今までは女オンリーだったけど。


でもこの二人……


俺は周の体から顔をちょっと覗かせると、にこにこ笑顔の女をちらりと見た。


二人とも口を開かなきゃ、かなりの美男美女ですっげぇお似合い!!


「想像するのはやめろ。俺の黒い過去だ。消せるもんなら消し去りたい」周が眉間に皺を寄せた。


「ど…どれぐらい、付き合ってたの?」


何となく聞いてみた。いや、何となくじゃなくて、俺は知りたかった。





―――周の昔のオンナ。





「72時間と32分6秒だ」周はいつになく真剣に俺を見降ろしてきた。


「あら惜しい。72時間と32分8秒よ♪」


どっちでもいいよ。そんな細かいこと…




72時間……たったの三日?




< 35 / 188 >

この作品をシェア

pagetop