- π PI Ⅱ -【BL】
はじめての嫉妬
周が前を向いたまま俺の手首を握ってくる。
「ふっ。やっぱりお前の目的はそれか。№5の香りを嗅いでから、何となくそんな予想はしてたがな。昔から俺と好みが被るから警戒してたが」
「話は早いわね。ヒロ、あたしにしない?退屈させないわよ」
いやいやいや…今でも充分退屈してないです。
「あのさ…気になってたんだけど、あんたたち随分親しそうだね。どーゆう知り合い?」
おずおずと質問すると、周はぐりんと振り返って、くわっと目を開けた。
目が「聞くな」と語っている。
こ、怖えぇよ。
「付き合ってたのよ。昔ね」
変わりに女の方がさらりと答えてくれた。
「は、はぁ!?」
そーだった!
周は男だけじゃなく女もイケるんだった。まぁ俺も、今までは女オンリーだったけど。
でもこの二人……
俺は周の体から顔をちょっと覗かせると、にこにこ笑顔の女をちらりと見た。
二人とも口を開かなきゃ、かなりの美男美女ですっげぇお似合い!!
「想像するのはやめろ。俺の黒い過去だ。消せるもんなら消し去りたい」周が眉間に皺を寄せた。
「ど…どれぐらい、付き合ってたの?」
何となく聞いてみた。いや、何となくじゃなくて、俺は知りたかった。
―――周の昔のオンナ。
「72時間と32分6秒だ」周はいつになく真剣に俺を見降ろしてきた。
「あら惜しい。72時間と32分8秒よ♪」
どっちでもいいよ。そんな細かいこと…
72時間……たったの三日?