- π PI Ⅱ -【BL】
性懲りもなくなく、またこいつの腹話術に乗せられるとこだった。
周は俺からおおかみのぬいぐるみを取り上げると、ぽいとそれを放り投げた。
「おおかみ相手なんかしてないで、俺様の相手をしろ」
なんて勝手なこと言って俺の上に乗り掛かってくるし。
「ヒロ、風呂一緒に入ろうぜ~」と言って額にちゅっとキスされる。
用は一緒に風呂に入りたいわけだ、こいつは。
最初は断ろうかと思ったけど、でも気が変わった。
まだまだ聞きたい事もあるし、それに…こいつの憎らしいほど整った顔を間近に見て、俺自身ちょっと離れたくなかった。
――――
――
入浴剤を入れた湯は温泉の匂いがした。
乳白色の湯をすくって、そこに俺はさっき見た刹那さんの顔を思い浮かべた。
「なぁ、さっきの女の人…刹那さん?あの人とはいつぐらいに付き合ってたんだ?」
俺の向かい側で手摺りに頬杖をついていた周が、ちょっとだけ不機嫌そうに眉を寄せる。
濡れた前髪をぞんざいに掻き上げる仕草は、ドキッとするほど色っぽかった。
こうゆう仕草も…刹那さんは知ってるんだ……
そう思うと、ちょっとだけ胸がズキリと痛む。
「付き合ったのは8年前だ。三日だけ付き合ったが、性格の不一致でね、すぐに別れた」
性格……ねぇ…
ってか8年前から指名手配されてたのかよ、あのひと。
キャリアウーマンだと思いきや、犯罪者だったとは…。
「あの人いくつなんだ?何かすっげぇ謎めいてるけど(暗に年齢不詳だと言っている←結構ヒドイ)」
「はっきりした年齢は俺も知らん」そう言ってから周は眉間に刻んだ皺をより一層深くさせて、両手をわなわなと奮わせた。
「…あの女…8年前から少しも変わってない。少しも老けないし、髪形や化粧まで一緒。化け物としか言えん」