- π PI Ⅱ -【BL】
実家に帰らせていただきます。
「周……、俺どーにかなっちゃいそうです。あの人…変を通り越して怖い…」
早く帰ってきて、と言いながらぎゅっと周おおかみを抱きしめ、それでも刹那さんの相手で一日疲れ切っていた俺はその晩、あっけなく眠りに落ちた。
次の日の朝、何故かべったりとくっついてくる刹那さんを振り払うこともできず、俺は通常通り会社に向かった。
電車の中で慌しく読んだ新聞には、昨日刹那さんが教えてくれた事件の概要が載っていた。
刹那さんの情報は正しかったってわけだ。
「行ってらっしゃ~い♪」なんて会社の前で手を振られて、若干げんなりしつつも三好の姿を見つけると、刹那さんから逃げるように俺は走りよった。
「よっ、昨日の酔いは大丈夫か?」
「…桐ヶ谷…昨日は…なんかごめんな」
三好はバツが悪そうに頭を掻いて俯いた。
「いや、いーって」明るく笑うと、三好はちょっとだけ微苦笑を浮かべて、
「お前は元気だよな。あんなにデート楽しみにしてそうだったけど、中止になっちまったって言うのに」
「……ああ、まぁそれはいいよ。忙しいヤツだからしょうがない。また今度行けるし」
刹那さんのお陰で落ち込む暇もなかったし……
「てか俺そんなに楽しみにしてそうに見えた?」
「そう見えたけど?」
三好も笑う。
いつも通りの三好だ。
やっぱ昨日のは酔っ払ってただけだったんだな。
――――
そして日常がはじまろうとしていた。
日常が……