- π PI Ⅱ -【BL】


――――

――


「お疲れさま、ダーリン♪迎えにきたわよ」


なんて出入り口に刹那さんの姿を見て、俺はがくりと項垂れた。


今日も平和を望めそうにもない。


あばよ、“平和”


俺は飛び去る平和の文字に泣く泣く手を振った。


しかも何かこれ…このシチュエーション…前にもあった??


あぁ、前は周だったんだ。それが刹那さんに代わったってことだけか。


相変わらず電車でもべったりとひっついてくる刹那さん。


周りの男から羨ましいような、嫉妬のような複雑な視線で見られた。


中身がまともならいいけど、この人は変な人で、しかも指名手配犯なんです!


なんて心の中で叫ぶ。



へとへとになりながらマンションに着き、刹那さんはまた部屋に入り込むのかと思いきや、またもちょっと目を離した隙に彼女は姿を消していた。


もう、今更あの人が居なくなったからって不思議には思わない。


どうせ周も帰ってこないだろうし、今日は久々にゆっくり休める…


なんて思いながら、エレベーターを待っているとエントランスに到達したエレベーターから




―――陣内が降りてきた。




びっくりして目をみはると、陣内はちょっと勝ち誇ったように薄笑いを浮かべた。


陣内が通り過ぎる瞬間、覚えのある周の香りがふわりと香ってきて、俺は慌てて振り返った。


陣内はちょっと挑発するかのように振り返りながら、顔に薄く笑みを浮かべている。


陣内―――…なんでここに…


ちょっとの間、見えない火花を飛ばして睨みあっていたが、エレベーターが閉まる音がして俺は慌てて乗り込んだ。


何であいつがここにいるんだよ!


周―――帰ってンのか!?





疑問と、疑惑そして―――嫉妬が入り混じってドロドロと醜く歪んだ心情で、



俺は目的の階に達するまで苛々と唇を噛んだ。




< 60 / 188 >

この作品をシェア

pagetop