- π PI Ⅱ -【BL】
「そーゆう問題じゃねぇ!鍵開いてンだぞ!誰か来たらどーするんだよ!!」
俺の顔に迫りながら、すでに俺の上半身のあちこちに手を這わしていた周を必死に押しのけた。…けど、びくともしない。
ワイシャツの中に手が入ってきて、直に肌に触れられたときになって、はっと思い出した。
いかん、いかん。危うく流されるところだったよ。
俺は周の手を止めるように被せると、
「さっき、下で陣内とすれ違った。あいつここに来たのか?」
と、思い切って聞いてみた。
周はワイシャツの中に手を入れたまま俺の鎖骨ら辺を撫でて、目だけを俺に向けてきた。
「陣内?ああ。ちょっと家で仕事するために、資料を運ばせただけだ」
「仕事…?資料を?」
探るように目を細めると、
「何だ、妬いてるのか?可愛いヤツめ。あいつとは何もない。って言うかそもそも好みじゃない。安心しろ。俺はヒロに夢中だ」
ヒロに夢中……
恐ろしい言葉だったが、でもちょっとだけ安心した。
仕事ならしょうがない……のかなぁ。
でもでも…
「荷物ぐらい自分で運べよ」ちょっと意地悪を言ってしまったが、周は気にする様子はなく、
「この俺様に力仕事なんて似合わないだろ?使えるものは最大限利用する」
これが俺様クオリティーだ。
なんて言って周は俺の耳の裏にそっと指を這わせた。
ああ、はい。周に常識を求めた俺がバカだったわけデス。
くすぐられるように触れられて、俺が顔をよじると首筋に周の口付けが降りてきた。
周の髪が頬や首筋をそっと撫で上げて、くすぐったいのと、そこから香る周の香りに―――
心地よさとは別の快感が押し寄せてきた。