- π PI Ⅱ -【BL】
なんて思いはじめたときには、もうすでに俺のシャツのボタンは全部外されていた。
周はいつの間にかワイシャツの袖から俺の腕を抜き取ろうとしてるし。
相変わらず早業だな。
感心していると、周はいつになく真剣な顔つきで俺を覗き込み、
「蜘蛛女の匂いがお前に染み付いてやがる。消毒だ」
なんて言いながら俺の首元にまたも顔を埋めてきた。
蜘蛛女の匂い―――…ああ、刹那さんの№5の香りか…
さっきまで一緒だったし、きっと移ったんだな。
そしてふっと陣内とすれ違ったときのことを思い出す。
あいつも―――周の香りを漂わせていた。
移るほど近くに居たのか―――…?
そんな思考を掻き消すかのように、周は俺の鎖骨に歯を立てた。
ちょっと顔をしかめて見下ろすと、
「集中しろよ」と周が挑発的に少しだけ笑う。
俺は言われたとおり、陣内のことを頭から振り払うようにちょっと首を振って、それでも、
「床。冷たいんスけど」と、半目で周を見た。
「すぐ熱くなる。それにお前がピカピカに磨いてくれたお陰で、清潔そのものだ。安心しろ」
なんて囁かれて、額にチュっとキスが落ちてくる。
床に背中が当たっているからだろうか。周の低い声がいつもより響いて、背骨に甘い痺れを感じた。
―――…俺の肌を滑るように周の細くて長い指が撫でていき、口付けを落とされる。
トロけるような甘い快感に思わず喉がのけぞった。
周の体温
周の香り―――
を、ゆっくり感じてる場合じゃねぇ。
「ぃってぇ!!!お前予告もなしに入れるな!!」
「ああ、すまん」
なんて言って周はにっこり。
全然『すまん』って思ってないだろ!!