- π PI Ⅱ -【BL】
「水族館かぁ…」
そう言えばここ何年も行ってなかったな…
なんてぼんやり考えていると、周の香りを身近で感じた。
周が向かい側から腕を伸ばして、俺の耳の裏をくすぐる。
周の細くてきれいな指先が耳の裏に触れて、くすぐったいような心地良いような不思議な感覚が訪れる。
身をよじってちょっと目を細めると、自然に笑みが浮かんだ。
「猫みてぇなヤツ♪」と言って周も笑った。
そしてその笑顔をちょっと緩ませると、
「円の定義を知ってるか?」と聞いてきた。
俺が首を傾けると、
「簡単なことだ。「マル」のことを言う。もう少し正確には、円とは『1つの点から等しい距離にある点をたどった時にできる図形』だ。この時できた図形の長さを距離で割った値がπ(円周率)で、3.14は近似値ってことだ」
「はぁ…」
それが何か…
朝から数学ですか??よっぽど円周率が好きだな…
「ここに一つの点があるとする」周はテーブルに指を置き、トントンと軽く弾いた。
「その点を同じだけの距離で離してつなげていくと、円が出来上がる。この二つの線は俺とお前。
サークルの点は永遠に離れることがない。
俺たちもな」