- π PI Ⅱ -【BL】
逃げるようにじりじりと後退すると、それを阻むように周が間合いを詰めた。
周の香りが鼻腔をくすぐり、それが今はちっとも心地よく感じずに、危険を孕んでいた。
ドキン、ドキンと心臓が鳴り、それでも緊張を悟られないよう、
「しつこいぞ。何もないっつったら何もねぇの!お前俺のこと信じられないのかよ!」と怒鳴った。
「信じる信じないの問題じゃない。お前はもっと自覚を持て、と言っている。でも分からないなら体に教え込むしかねぇな」
周がぽきぽきと手の関節を鳴らしたので、俺は顔をさっと青くしてその場から逃げようとした。
え!?俺ボコられる??それってDV?
そんな危険を察知して慌てて逃げ出そうとしたけど、あっさりと周の腕に捕まる。
ぐいっと乱暴に後ろ髪を引っ張られ、上を向けされらると、噛み付くような乱暴なキスが降りてきた。
「―――っん!」と短く声を漏らして抗議するようにドンっと周の胸を叩くと、唇はあっさりと離れていった。
その代わりに、後ろを向かされるとぐいっと腕を捻り上げられる。
「ぃて!何すんだよ!!」そう怒鳴ったが、周は俺の両手をあっさり拘束すると、寝室に押しやった。
暗い部屋に大きなベッドだけがリアルに映って、ドキリと心臓が嫌な音を立てた。
「何するかって?言ったろ?体で教え込むって」
俺の耳元で低く囁かれ、ぞくりと背中に嫌な汗が浮かんだ。
いつものふざけて襲ってくる声じゃない。低くて、背骨までしっかりと響く声。
周は俺をベッドに倒すと、俺の背中にかぶさってきた。
「やめろ!今ふざけてる場合じゃない!」顔をよじって抗議するも、
「ふざけてなんかない」と感情のない声が返ってきただけだった。
周は片手で俺の両腕を拘束し、空いた方の手で俺の胸元に手を這わすとネクタイを乱暴に引き抜いた。
「何!」
「お前が暴れるからだ。ちょっとの間大人しくしててもらう」
何をするかと思いきや、周は俺の頭を押さえつけると、いとも簡単に俺の両腕を背中でネクタイで縛り上げた。