- π PI Ⅱ -【BL】
俺は目をまばたいて周を見つめた。
「他の夫婦だって同じだ。だから丸い結婚指輪で互いの気持ちを尊重し合う。
俺たちはその夫婦と何ら変わりない。
俺たちは永遠に離れることのない点と線」
周―――………
たとえ誰に何を言われようと、形あるそれが存在する限り―――俺はお前を愛し守り抜く。
最後にそう言われて、周の指先がそっと俺の唇に触れた。
周の手首からあの爽やかな香りが漂ってきて、その心地よい香りに溺れそうだ。
「周―――……」
顔を近づけると、周からまったりと濃厚な香りを感じた。
香水を付けすぎ…とかじゃない。こいつ自身が放つオーラに、自信に……俺は囚われてとことんまで引き込まれる。
唇が触れ合う瞬間―――
俺の目に映ったのは、リビングボードの上の置時計。
「ヤバッ!時間だっ!!」
俺の唇は周の唇に触れることがなかった。
「ちっ。あと少しだったのに!」と周は悔しそうに舌打ちした。
は……?