- π PI Ⅱ -【BL】
いつものふざけて言ってる様子じゃない。
刹那さんのまなざしは真剣そのもので、俺の手をぎゅっと握ってくる手には力が篭っていた。
「周とあたしは似てるんでしょ?だったら女のあたしの方がいいに決まってる。男同士なんて背徳的だし、倫理にも反している。
まだまだあなたたちはマイノリティ(社会的少数者)だわ。
あたしだったらあなたをこんな風に悲しませたりしないし、辛い目にも遭わせない。
あたしとだったら手を繋いで堂々と道を歩くこともできるし、誰が見たって普通のカップルだわ。
周との愛を―――神に背いてまで、貫くよりも
あたしたちが一緒になる方が絶対に自然よ」
刹那さんは妖艶に微笑んで、俺の頬を撫で上げる。
周と似てると思ったけれど、その手のひらの体温だけは―――あいつと違った。
周の手のひらはいつも熱があるようにあったかいけれど、刹那さんの手はひんやりと冷たい。
刹那さんの言う通り―――……
それが自然なのかもしれない。
この手を取れば楽になれるのかもしれない。
すぐ近くで刹那さんの上品な香り……№5がフワリと香ってくる。
だけど
それは俺が大好きな、周の香りじゃない―――
この部屋にはやっぱり周の香りで溢れていて、こんなときでさえ周に抱きしめられている感覚に陥る。
そう―――あいつはあいつのやり方で、いつも俺を守ろうとしてくれていたんだ。
俺はあいつにいつも包まれている。
3.14の先にはずっとずっと数字が続いていて、その数字には終点がない。
俺とあいつにも―――終点がなく永遠なんだ。