- π PI Ⅱ -【BL】
「ありがたいですけど、俺―――やっぱり周がいい。周じゃないとダメなんだ。
あいつを
愛してるから」
俺の声はしっかりと寝室に響いた。
刹那さんは目を開いて、俺の頬を撫でる手を止めた。
「どうして?あんなことされたのよ?もう嫌いにならないの?」
「嫌い……?うーん…」
その問いに俺はちょっと首を捻った。
「あいつの嫌いなところを挙げると、そりゃキリがないですよ。意味不明だし、変態だし、減らず口だし、鬱陶しいし…」
「あらあら♪」刹那さんは楽しそうに頷いた。
「でも―――それ以上に好きなんです、俺……。もうどうしようもないぐらい……」
「あらあら」
刹那さんが優しく微笑んで俺の頬を指でなぞる。
「だから―――すみません……」
俺がちょっと顔をよじって刹那さんを真正面から見ると、刹那さんは切れ長の瞳を三日月のように細めて優しく微笑んでいた。
「失恋しちゃったわ。人生で2度目の。せっかく素敵なパートナーになれると思ったのだけど。残念ね」
「たったの二度だったらいいじゃないですか。俺なんてフられてばっかり」
ちょっと笑って返すと、
「こんなにいい女をフって後悔したって知らないわよ?」と悪戯っぽく刹那さんは笑う。
俺はそんな刹那さんの笑顔にちょっとだけ救われた。
今日刹那さんが来てくれて―――良かった……