- π PI Ⅱ -【BL】
どうしてなんだよ…
刑事たちは俺が犯人だって、決めてかかってるし。
このまま周と会えないまま…
いや、会えたとしてもあいつにどんな顔されるのか……
髪が落ちてたって事実は言い逃れができない真実だし、犯人じゃない!って言ってもあいつは信じてくれるのか…
周に疑われて、軽蔑されることを考えると―――心臓がねじれるように痛む。
そんなことを思って項垂れていると、覚えのある香りと靴音が近づいてきた。
俺が顔を上げると、鉄格子の向こうでスラリとスマートな周がポケットに手を突っ込んで立っていた。
後ろにさっきのいかつい刑事を従えている。
「周……」
弱々しい声は冷たいコンクリートに吸い取られて、あいつの元に届いたのか分からない。
周はちょっと後ろを振り返ると、
「俺はこいつに聞きたいことがある。外してくれないか?」と刑事に無表情に言った。
「しかし!」刑事が目を吊り上げたが、
「下がれと言ってる!」と周が声を荒げた。
威圧的な声に―――俺も刑事もびくりと肩を震わせ、やがて刑事はしぶしぶ帰っていった。
周は怒ってる……?
だけど周はわずかに顔を斜めに向けて、顔に翳りを滲ませていた。
その表情が―――場違いにも色っぽいと思ってしまう。
「ヒロ。………すまない」
え―――………?
「悪かったと思ってる。こないだは無理やり突っ込んで…」
えっ!?
そこ!?今謝ること!!?
いやいやいや…
「この状況を見て、他に言う事があるだろ」
相変わらず意味不明の周に、俺は呆れたように盛大にため息を吐いた。