- π PI Ⅱ -【BL】
唇が離れると、周は手を伸ばして俺の耳の後ろをそっと撫で上げる。
周にそうされると、くすぐったいのと気持ちいいのとで気持ちがほぐれていく。
この前の恐ろしいほどの恐怖は微塵も感じなかった。
周の香りをすぐ近くで感じて、緊張がゆっくりと溶けていく。
鉄格子の間から周の腕が伸びてきて、俺の背中に回された。
ぎゅっと抱きしめられて、背中を宥めるように撫でられる。
「ヒロ、何でもいい。昨日のことを思い出せないか?」
そう問われて俺は首を捻った。
「何でもって……変わったことも起きなかったし…」
「誰かと喋ったとか、どこかの店に行ったとか」
そう言われて、俺は「あっ!」と声を上げた。慌てて顔を上げると、
「刹那さん!そう言えば刹那さんに時間を聞かれて、そのあと刹那さん紅茶を零したんだ!ちょっとした騒ぎになったからお店の人が覚えてるかも!」
「それは本当か!」
「間違いないよ」
俺がしっかり頷くと、周は
「確認する。ヒロ、待ってろ!俺が必ず真犯人を見つけてやるからな!」と慌てて走っていった。
周―――……頼む…
それから――――ありがとう………
――――
――
周は俺のためにがんばってくれている。
俺も…自分なりに何か考えないと。
質素なベッドに座って俺は腕を組んだ。
俺の毛髪を手に入れられるのは…やっぱり三好だ。三好の家に泊まりに行ったときに幾らでも入手することは可能だ。
だけど―――…今回俺が逮捕されてあいつが犯人でないことが分かった。
あいつの血液型は―――
O型だから。