- π PI Ⅱ -【BL】
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「お前の持ち物だ。間違いはないな?」
いかつい刑事にケータイだの、没収された財布だのを見せられ俺は机に並べられた持ち物を眺めた。
ミニ周おおかみのついた鍵を見つけて、ちょっとだけ頬を緩めると、俺はそれを手に取りスーツのポケットにねじ込んだ。
「間違いありません」
「すまなかったな。疑わしいとは言え、一日拘留して。これは詫びのつもりだ」
紙コップに入ったあったかいコーヒーを手渡され、疲れ切っていた俺はそのコーヒーを素直に受け取った。
コーヒーは苦味が飛んでいてあまりおいしいとは言いがたかったけれど、何かを喉に通したくて一気に飲み干した。
「橘警視が迎えにくるそうだ。もう少し待ってろ」
そう言って刑事は立ち去っていった。
周―――…一刻も早く会いたい…
ひと時、何もかも忘れてあの力強い腕で抱きしめられたい。
あの香りに包まれたい。
キスを交わして、あいつの腕の中で―――ゆっくりと眠りたい……
でも
伝えなければならないことがある。周の腕でゆっくりと眠るのは、その後だ―――
そんなことを考えているときだった。
「運のいいヤツ」
俺の前に―――
陣内が現れた。