さあ、俺と秘密をはじめよう


授業も終わり、急いで帰り支度をしようとする。


机から教科書を取り出し、カバンの中へと納める。



「陽~、今日、帰りにどっかに寄らね?」

尚弥から放課後のお誘いが来た。

本来なら俺は遊びに行きたいところだが、生憎俺は放課後の予定がびっしりと詰まっている。

つまり、遊んでいる暇はないということだ。

おまけに言うならそれが毎日である…。

大丈夫か?俺の青春…学生生活…と自問自答したいくらい、枯れてるなーと日々思ってしまうわけだが、


そんな余裕すら今はやっている時間がない。

急いで樹希を迎えに行って、家に帰って、準備して、即行「CRAW」に行かなければ…ならない。

もし遅刻でもしたら確実に死は免れないだろう。

番長…陟さんの手によってそれは決められる。

なので1分1秒でも急がなければ…。


「わりー、今日も無理だ」

「お、女か!?いつものことながら…お前…」

尚弥の言葉を聞いてなかった俺はかばんを肩にかけ、ドアに向かう。

「急がなければ殺される。じゃーな」

昌太にさよならと挨拶だけを告げ、ダッシュで制靴に履き替え門へと出て、保育園へと向かう。






そのころ―――――陽がいない教室では――――



「殺されるって…どれだけ凶暴な彼女なんだ…?」

「彼女じゃないと思うぞ?」

「なぬ!?彼女じゃないって…まさか…そっちけ…」

「何言ってんのよーーー!!」


昌太の言葉に反応する尚弥に知砂はアッパーカッターを喰らわせた。

見事にクリティカルヒット。


尚弥の言葉に教室がザワメキ、教室にいる女子は

『いやーーーーーー』

『ウソでしょ?』

『わ、私黒崎君に告白しようと思ってたのに…』

泣く者も多数、諦めた者もいる。


一方、教室にいる男子は

『黒崎ってそっち系だったのか…』

『俺、黒崎ならありかも…』

『俺もだ…』

『でも、黒崎ってさー、この前、綺麗なお姉さんと一緒にいたところを見たってやつがいるんだよ…』

『え?マジ?俺、ダンディーでちょい悪って感じのおっさんと一緒にいたってところを見たやつがいるって聞いたけど…』


『マフィア関連!?』

『ヤ○ザ関連の間違いだろ?』

『でもまあ、黒崎なら―――』

『『何でもありだよな!』』


こうして、黒崎陽の噂が広大に広がっていくのであった。

数多の噂はここから出来ているといっても過言ではない。


尚、音楽科の教室にいた生徒は全てが音楽科の生徒ではない、他学科の生徒もいたため、

この日の境にまた新たな噂が追加され僅か数時間で全校生徒まで広がっていったのだった。


















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