さあ、俺と秘密をはじめよう
他に思いつけるもの…。
出せる知恵?を出せるだけ絞り出した。
一つだけ思い浮かびあがった。
だが、これは彼女にとってお詫びと言えるものなのか分からない。
だが、言ってみる価値はあるはず。…たぶん。
「歌って?」
「え?」
突然俺にそんなことを言われたのか彼女は呆けた。
「ねぇ、もう一回歌って?」
彼女は何も答えない。
うんともすんとも言わず。
そこだけ沈黙していて今だけは俺たちの世界―――。
その沈黙を最初に破ったのは俺だった。
「君の声が聞きたい。歌ってるところみたい。――もう一度。今度は隣で」
真剣な瞳で俺を見る彼女は俺の真意を探っているようだ。
彼女はまだ返答しない。
俺は正直に真剣に彼女に思いをぶつける。
「初めて君に出会ったとき俺は君の声に魅かれた。なんて綺麗ではっきりとしていて透き通って一点の曇りもない声なんだろうって。2度目は君が歌ってるところを見て、天使の歌声だって思わず思ってしまったんだ。表現力低いけどさ、本当に思ったんだ。君の歌とても上手で雰囲気もあって、俺――――」
最後まで言い切ろうとしたところで彼女の指先によって塞がれた。
彼女の指先が唇に当っている…。
「もういい…」
彼女は苦笑交じりに泣きそうな顔をする。眉も若干下がっていた。
何でそんな顔をするのだろうか。
俺がそんな顔をさせてしまったのか。