ファンファーレに想いを乗せて
一時間目の終わりを知らせるチャイムが鳴り、桜井くんと屋上を後にした。
「あ〜、寒かった」
「だから先に行ってもらっていいよって言ったのに」
「先に行ったら一人寂しくて泣くだろ」
「泣かないしね」
「素直じゃない奴」
あまり話したことのなかった桜井くんだったけれど、寒空の下での一時間で彼を沢山知ることが出来た。
ギャーギャー言いながら教室に行くと、
「桜井〜、何処行ってたんだよ〜。っと、あ、あずさ……」
まさか、教室に入ってすぐに彼に会うとは思ってなくて、
「あ……あ、おはよ」
何故か、動揺しながら挨拶をしてしまう。
いつもと同じように
そう思っていたのに、顔を見ると、昨日の“小泉カオル”さんのことを考えてしまって、うまくいかない。彼の前で、うまく笑えない。
そんな私が、桜井くんと一緒にいるのが不思議なのか、彼は、私たちを交互に見ているのが分かった。