ファンファーレに想いを乗せて

「さっきの授業のノート見せて」


桜井くんが彼に声をかけると、はっと我に返ったように、


「あ、あぁ」

と返事をしながら自分の席に戻ろうとして、「あっそうだった」と振り返った。


「マネージャーがさ、青葉高との練習試合どうなったんだって聞いてたんだけど、なんか知らないか?」


青葉高

びくっと体が反応する。
彼女のいる高校。


二人の会話を聞きたくないって思う自分と、聞きたいと思う自分が存在する。


聞けば、なんとなく後悔する気がしたけれど、それでもその場を離れることはできなかった。

それは、聞きたいって気持ちが強かったから。



「青葉高?あぁ、冬休みすぐに試合するって監督が言ってたけど?」

桜井くんがそう言ったまさにその時、ブルブルと彼のズボンのポケットに入れていた携帯が震えたんだろう。


「おっ、ナイスタイミング」


そう言って携帯を開いた彼は、

「12月25日、日曜日の午後1時半から青葉高グラウンドで試合決定だって」

メールを読み上げた彼は、


「カオルからメール」


そう言って、キラキラした笑顔を見せた。

< 101 / 224 >

この作品をシェア

pagetop