ファンファーレに想いを乗せて


次の日から、私と彼の関係は変わった。


「おはよ、あずさ」

なんて声をかけてくれる彼は、もういない。


朝、教室に入ると、男子の輪の中で楽しそうに話している彼と目が合った。

何も言わずに逸らされる視線に、覚悟していたこととはいえ、胸がぎゅうっと苦しくて、息苦しくなった。



授業中、目の前の彼の背中を見るたびに、変わってしまった関係に泣きそうになるのをこらえた。

自分が言い出したことなのに、こんなに苦しいことだとは思わなかった。



“あずさ”

そう呼んで笑顔を見せてくれた彼は、もういないんだ。


背中越しに無言で渡されるプリントに、ぐっと涙を堪えた。


昨日まで大好きだった彼の後ろの席は、今は、苦しくて、出来れば誰かに代わってほしかった。


こんなに近くにいるのに

遠い


彼が、遠い


手を伸ばしたら触れられる距離なのに、触れられない見えない壁が立ちふさがっている。


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