ファンファーレに想いを乗せて
「昨日、何があった?」
放課後、昨日の授業のノートだと、ルーズリーフの束を持って私の席に来てくれた絵里は、目の前の彼が座っていた椅子にドカッと腰をおろすと、
「全部話さないと、ノート見せてあげないんだからね」
と悪戯に笑った。
「はい」
絵里は、コトリと机の上に飴玉を置いた。
「糖分取ったら、嫌なことも忘れられるらしいよ」
「ほんとに?」
「さぁ?」
そう言って笑いながらも、私のことを気にしてくれてるって分かるから、
「ありがと」
飴玉を手に持つと、ポツリポツリと昨日のことを話し始めた。
昨日、伊藤玲花が話した内容を。
それを聞いて、“あずさ”って呼ばれちゃいけないって思ったこと。
そして、小泉カオルさんからメールが来た時の、加藤の嬉しそうな笑顔を見たら、完全な片思いなんだって思い知らされたこと。
思わず飛び出した昇降口で、加藤に「もう“あずさ”って呼ばないで」って言ったこと。
絵里は、黙って、時々頷きながら最後まで聞いてくれていた。