ファンファーレに想いを乗せて
「どうした?」
教室に響く声に顔を上げたら、野球部キャプテンの桜井くんが立っていて、慌てて制服の裾で涙をごしごしと拭いた。
「べ、別に」
「そっか」
泣いていたのは分かってるのに、聞いてこない桜井くんの優しさに感謝して、自分の席の日誌を手にすると、職員室に向かおうと廊下へと一歩足を踏み出したら、
「なぁ」
桜井くんに呼び止められた。
「な、に?」
くるりと振り向いて彼を見れば、忘れ物を取りに来たのか、ハンドブックを手にした彼が、自分の机に腰をかけてた。
「何かあった?」
「え?」
彼の言葉が何を意味してるのか、分からず聞き返した。
それは、先ほどの涙の意味を聞いているのだろうか。
それとも、また違うことなんだろうか。
「お前ら、最近、変だろ?」
桜井くんの言う“お前ら”が、誰を指しているのかが分かる。
私と、彼
これまでが仲良すぎたから、いきなり話さなくなったから、周りも分かりやすかったんだろう。