ファンファーレに想いを乗せて

「落ち着いたか?」


そう桜井くんが聞く頃には、随分と冷静になっている自分がいて、目の前の彼に泣きついていた自分が、今さらながら恥ずかしくなって、



「あの、ごめん。今の、全部忘れて!」

と頭を下げた。


「ん?あ、あぁ、了解」

そう言った彼は、言葉を続ける。


「アイツに、話せば?」

「何を?」

「今言ったこと、全部」


それは、彼に告白するということ。


「無理だよ」

「なんで?」


加藤には、好きな子がいるから。
そして、その子も加藤のことを、きっと好きだから。

加藤のキラキラした笑顔を見せられるのは、彼女だけだから。



「桜井くんは、好きな子っていないの?」

「なんだよ、いきなり」


本当、いきなりだけど、聞いてみたいんだ。もし、私と同じ立場なら、他の人はどうするのか。

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