ファンファーレに想いを乗せて
「さて、と」
もう行かなきゃ。と呟いた彼は、廊下に出る一歩手前で、教室の中にまだいる私を見た。
「久保田」
「何?」
「野球部、たまにはそっから見てろよ」
そう言って、顎で教室の窓を指した。
「え?」
「応援してんだろ?甲子園に行けって」
それは、以前、加藤に言った言葉。
「じゃあな」
そう自分が言いたいことだけ言うと、グラウンドに向かって走っていった。
応援してる
彼を、応援している。
その気持ちは、彼に振られても変わらない。
彼がいる野球部が、甲子園に行けるように、応援している。
ずっと考えていた。
加藤と距離が開いて、諦めなきゃって自分に言い聞かせて。
だから、加藤に関するもの全てに目を背け、放課後もここからグラウンドを眺めることもしなくなった。
だけど、桜井くんの言葉で思う。
応援する気持ちは、ずっと持っていてもいいんだって。
彼が、甲子園で活躍する姿を想像して、一人応援していたっていいんだって。
私、やっぱり、諦めの悪い子みたいだね。