ファンファーレに想いを乗せて
チャイムぎりぎりで教室に入ってきて、私の席の前に座った彼は、くるりっと振り向き、
「俺、加藤大樹。よろしくな」
そう言って、キラキラと眩しい笑顔をくれた。
いつも遠くから見ていた、あの笑顔が目の前にあって、これは夢なんじゃないかと思ってしまった。
「あっ、わっ私、久保田あずさ、です。よ、よろしく」
まさか、声なんてかけられるなんて思ってなくて驚きと同時に、好きな人に話すことの緊張とで、どもって噛みすぎて挨拶した私に
「くくくっ」
と何かを抑えるように笑った彼に恥ずかしくて、穴があったら入りたい気持ちで、俯いてしまったら、彼の右手が俯いた先に差し出された。
その行動がよく分からなくて顔を上げると、
「よろしく」
って言って、強引に私の右手を掴んで握手をした。