ファンファーレに想いを乗せて


はぁはぁと息を切らしてやってきた教室の外。


開けっ放しになっている扉から中の声が聞こえてきた。


あずさの他にも誰かいるのか?


ちらりと中を覗くと、その光景に

「っ……」

言葉が出なくなった。




「……好きなの…」

切なく放たれたあずさの言葉に、

「あぁ」

と返事をして、彼女の頭に手を置いているのは、桜井。





あぁ、そうか

やっぱり、そういうことだったのか。



あずさは、桜井のことを好きだったんだな。
俺じゃなかったんだな……


桜井なら、仕方ないよな


とぼとぼとグラウンドに戻る途中、何故か分からないけれど

「はははっ」

笑ってしまう。


馬鹿みたいだな、俺。
俺さ、あずさは、俺のこと好きでいてくれてるんだって思ってた。

勘違いも甚だしいよな。







「加藤先輩、どこ行ってたんですかぁ。キャプテンもいなくなるし」

グラウンドに戻ると声をかけた伊藤のその言葉に、先ほどの光景が蘇る。


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