ファンファーレに想いを乗せて
「さちっ!」
低くてやわらかい声が聞こえてきて、声がした方を見れば、坊主頭の優しそうな感じの男の子が立っていた。
「あっ!カオルちゃん!」
さっちんの声に、どくんっと胸が騒ぎだすのが分かった。
カオルちゃん……
その名で思い出すのは、彼の好きな子の名前
小泉カオル
「紹介するね、彼氏の、小泉馨(カオル)くん。こっちは、中学の時の親友で、絵里とあずさ」
小泉……カオル…
小泉カオルって、
なんで?
え?何がどうなってるの?小泉カオルって女の子じゃないの?
加藤の好きな子じゃないの?
私
私……
とんでもない誤解をしてたの?
「ちょっ!さっちん、どういうこと」
同じことを思ったんだろう。言葉が出せないくらい驚いている私の代わりに絵里がさっちんに問いただす。
「え?」
ぽかんと口を開けているさっちんに、
「小泉カオルって、男なの?」
目の前の彼に向かって失礼ではないかというようなことを平気で聞いてしまうくらい、絵里も私も動揺していたんだ。
「やだ、何言ってんの。見たら分かるでしょ。男だよ」