ファンファーレに想いを乗せて
えっ……何?
なんで?
なんで、彼の腕に腕を絡ませているの?
ただ茫然と、二人の姿を見つめていた私に気付いたのか、彼と視線が絡まった。
「あっ……」
と、彼の声が聞こえたかと思うと、
「久保田先輩〜!聞いてください〜」
彼の隣から、楽しそうに大きな声で私を呼んだ彼女。
その場から足が動けない私に、にやりと嘲笑うように口角を上げて、ずかずかと教室に入ってきて私の腕を掴んで、そのまま廊下へと連れていった。
「私、加藤先輩と付き合うことになったんです」
一瞬、彼女が何を言っているのか分からなかった。
彼と、付き合う?
彼の彼女?
あなたが、彼の特別なの?
「加藤先輩に、近づかないでくださいね」
あまりにも低いその声に、まるで別人じゃないかと彼女の顔を見れば、ぞくりとするくらい冷たい表情の彼女の姿があった。
可愛らしく“久保田先輩”なんて呼ぶ彼女は、どこにもなく、ただ、威圧感たっぷりの彼女の姿がそこにはあった。
「そういうわけなんで、じゃあ」
そう言って自分の教室へと向かう彼女をただ茫然を見つめていた。