ファンファーレに想いを乗せて
「ちょっ!何、今のっ!なんなわけ!」
廊下に顔を出して騒ぐ絵里にかける言葉もなく、とぼとぼと教室へ入れば、なんとなく、教室の中にいる生徒たちの視線が私を哀れんでいるように思えて、この場から逃げてしまいたくなった。
そんな私に、
「久保田」
と声をかけた主を見れば、困ったような顔をする桜井くんがいた。
あぁ、さっきの表情は、だからか。
野球部を見てもいい?と聞いて、困ったようななんともいえない顔をしたのは、彼が彼女と付き合ってるって知っていたからか。
「あの、さ」
言い辛そうに言葉をかける彼の横を、加藤が通りすぎた。
視線は、つい、廊下へと出た彼を追いかけてた。
なんで?
その言葉ばかりが頭に浮かんできてしまう。
なんで、彼女と付き合ってるの?
「ちょっ!桜井っ、どういうことよ」
私のすぐ傍にやってきて、怒ったように問いただす絵里に、桜井くんは困ったように私を見ると、
「彼女がアイツに告って、アイツが返事をした。ただそれだけのことだ」
と、静かにそう呟いた。