ファンファーレに想いを乗せて

「さぁ?」

答えにならない返事を絵里にしながらグラウンドにいる彼を眺めれば、


「私はさ、加藤はあずさだって思ってたんだけどな」

そう言って寂しそうに笑う絵里に、何故か申し訳なくなって、


「ごめん」

と呟いた。



もしも、私に、ほんの少しの勇気があったなら、
もしも、私に、ほんの少しだけ勢いがあったなら、

彼に告白することができたんだろう。


仲良くなりすぎたとか、今の関係のままでいいとか、そんなこと考えてないで、ただ、好きだと言えていたら、今、私は、また違う気持ちで彼を見つめているんだろうか。


分からない。


何度、もしも……と思っただろう。
何度、こうやっていれば、と後悔しただろう。


今さら、遅いこと。

過ぎてしまったものは替えられない。
起こってしまったことは、なしにはならない。


今になって、ようやくそれに気付いた私は、やっぱりどうしようもなく、それでも彼を諦めきれなくて、そんな気持ちを、どうすることもできないでいるんだ。
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