ファンファーレに想いを乗せて

「あぁ、うん。よろしく」


そっか。桜井くんも同じクラスなんだ。

少しだけ複雑な気持ちになったのは、彼を通じて彼がここに来ることがあるかもしれないから。


彼の姿が見られるのは飛び上がりたくなるくらい嬉しいことだけど、あの頃のキラキラした笑顔を見せてくれない彼ならば、会えない方がいいのかも。と思ったりもする。



彼女と仲良く登校する彼の姿や、彼女の名前を呼ぶ彼の声を聞きたくないのと同じように、そんな彼には会いたくない。



会いたいって気持ちと会いたくないって気持ちが複雑に入り交じっている。



「どうかした?」

「ううん、何も」

どんな表情をしていたんだろう。大丈夫か?と聞いてきた桜井くんに無理に笑顔を見せ、席に着いた。



「なぁ、久保田」

「ん?」

振り返り、彼を見ると、

「あのさ、」

言い辛そうに言葉を発し、ふぅっと軽く息を吐いて、後に続く言葉を吐き出そうとした時、


「桜井〜っ!」

廊下から彼を呼ぶ、大好きな声が聞こえてきた。

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