ファンファーレに想いを乗せて

「あっ……」

思わず、見てしまう。
彼もこっちに気付いたのか、目が合った。


あの頃なら、おはよう。なんて笑って挨拶を交わしていたのに、今は、それもなく、ただ、寂しげな瞳が私の目に映るから、思わず目を逸らして絵里の席へと移動した。



絵里の元へ行き、他愛ない会話をしながらも、こっそりと目は彼を追っていた。


教室の入り口付近で桜井くんと話していた彼は、じゃあな、と笑って軽く手を振って、その場を去って行った。


彼の笑顔を見るのは久しぶりで、懐かしく感じたのと同時に、もう、あんな風に笑ってくれることはないんだなと思うと、悲しくもなった。


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