ファンファーレに想いを乗せて

「約束をね、したの」

「約束?」

「そっ」



そう。
あの頃、彼のすぐ傍で、いっぱい話して、いっぱい笑い合っていた頃にした会話。



“来年の夏は、絶対に甲子園に行くよ”

真っ直ぐに真剣な目で決意を語ってくれた彼に、


“加藤が甲子園の舞台に立つんだったら、私、アルプススタンドからファンファーレ吹いて応援するよ”


そう言ったら、キラキラした笑顔をして、こう言ってくれたよね。


“あずさのファンファーレ聴いたら、俺、すっげ〜ヤル気出るわ”

って。



彼を応援してる。
こんな風になった今でも、その気持ちは変わらないから。


誰よりも一生懸命頑張る彼を、遠くからでも応援していたいから。


約束だから。



「約束、なんだ」

そう呟いた言葉に、

「入部許可」

そう言って笑ってくれた菜々は、それ以上聞こうともせず、ただ、ちゃんと約束は守んなきゃね。って言って、肩をバシッと叩いた。


そんな彼女のエールが温かくて、

「痛いって」

って言いながらも、自然と笑みが零れた。

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