ファンファーレに想いを乗せて



5月中旬の、ある昼休み



「あれ?」


ぽかぽかと暖かい日差しに、窓際の自分の席でうとうととしていた私は、低くて懐かしい声に目が覚めた。

声がした後ろの席を振り向くと


「っ……!」

そこには、大好きな彼が立っていた。



「ど、うしたの?」

キョロキョロと周りを見回している彼に、声をかけたのは、まだ頭がすっきりと目覚めてないからだと言い訳をする。


彼も、まさか声をかけられるなんて思っていなかったんだろう。一瞬、驚いたように目を見開いて、こちらを見つめた。



ドクドクドクドク……

煩く騒ぎだす胸の音が、目の前の彼に聞こえてそうでそっと深呼吸をした。



「あ、あぁ。桜井、何処かなって思って」

懐かしい声が耳に響いて、くすぐったい気持ちになる。


「桜井くん?」

彼と同じように教室を見回してみたけれど、彼の姿は見当たらなかった。

< 147 / 224 >

この作品をシェア

pagetop