ファンファーレに想いを乗せて
5月中旬の、ある昼休み
「あれ?」
ぽかぽかと暖かい日差しに、窓際の自分の席でうとうととしていた私は、低くて懐かしい声に目が覚めた。
声がした後ろの席を振り向くと
「っ……!」
そこには、大好きな彼が立っていた。
「ど、うしたの?」
キョロキョロと周りを見回している彼に、声をかけたのは、まだ頭がすっきりと目覚めてないからだと言い訳をする。
彼も、まさか声をかけられるなんて思っていなかったんだろう。一瞬、驚いたように目を見開いて、こちらを見つめた。
ドクドクドクドク……
煩く騒ぎだす胸の音が、目の前の彼に聞こえてそうでそっと深呼吸をした。
「あ、あぁ。桜井、何処かなって思って」
懐かしい声が耳に響いて、くすぐったい気持ちになる。
「桜井くん?」
彼と同じように教室を見回してみたけれど、彼の姿は見当たらなかった。