ファンファーレに想いを乗せて

距離


私は、諦めが悪いのかもしれない。


彼に好きな子がいるって聞いて、
諦めなきゃいけないって、好きでいても辛いだけだって思うのに、諦めきれないのは、きっと、この席のせい。


近い。

彼との距離が近すぎるんだ。

目の前に彼の背中があり、黒板を見る度、彼が視界に入ってしまう。

プリントが前から配られる度、彼が振り向いて「はい」と言って渡してくれるから、その度に胸がドキドキしてしまうんだ。


触れてしまいそうな距離だから、いつまで経っても胸はドキドキしてしまう。


「おはよ」

そう言って朝、彼が席に着く度に声をかけてくれるから、好きって気持ちが大きくなっていってしまう。


この席にいる限り、視界から彼が消えない限り、彼を諦めることなんてできないんだ。


諦めるどころか、好きって気持ちはどんどん大きく膨らんでしまうんだ。
< 15 / 224 >

この作品をシェア

pagetop