ファンファーレに想いを乗せて
きっと、私が謝ると思っていたんだろう。
予想外の言葉を聞いて、言葉に詰まった彼女は、
「人の彼氏に手を出すなんて、最低っ!」
先ほど言った言葉をもう一度投げかけてくる。
「出してなんて、ないけど?」
そう。出してなんてない。
いつだって逃げていた。
彼は他の誰かの彼氏だからって自分の気持ちに蓋をして諦めなきゃって、ずっと思ってた。
彼と距離をおいていた。
「私はっ!加藤先輩と付き合ってるんですっ。特別なんですっ。あんたはただの同級生じゃないっ!
彼女に悪いと思うなら先輩に近付かないんじゃないですかっ」
なんだろう。
こうやって怒りを露にして向かってくる彼女の言葉に、あの頃なら、びくついて、怯んで。
そうだな、彼女に悪いから諦めなきゃなんて思っていたのに、今、目の前の彼女に対してそう思えないんだ。