ファンファーレに想いを乗せて
そんな、6月の初め
放課後の部活で、トランペット片手に、中庭に出ていた。
今日は、暑いくらいのいい天気で、屋外でパートごとに集まって練習をしようということになったのだ。
青空の下で吹く音は、風に乗ってどこまでも遠くへ飛んでいく。
「ねぇ、ねぇ、あずさ」
「ん?」
話しかけてきたのは、菜々。
「野球部に一緒に来てくれないかな?」
「え?」
なんで?と思ったけれど、彼女が胸に抱えている楽譜の束を見て、理解できた。
「あ〜、もう、そんな時期か」
「そっ。本人たちの希望も聞かなきゃね」
彼女が抱えている楽譜は、打者のテーマ曲。バッターボックスに立つ時に流れてくるファンファーレ。