ファンファーレに想いを乗せて
校舎を抜けると、先ほどまで聞こえなかった金属バットの音が聞こえてきた。
“カキーンッ”
“カキーンッ”
気持ちいいくらいに響いてくるその音に、彼の姿を想像した。
今、彼も、真剣な瞳で白球を捉えているんだろうか。誰よりも一生懸命な姿を見せているんだろうか。
そんな彼の姿を想像すると同時に、甘ったるい声で「加藤先輩〜」って呼ぶ彼女の姿まで想像してしまい、フルフルと頭を振った。
「どうかした?」
「ううん、なんでもない」
なんでもない。
気にしない。気にしない。
そう自分に言い聞かせながらグラウンドに行くと、一生懸命頑張っている彼の姿が真っ先に目に留まった。