ファンファーレに想いを乗せて
「ごめん」
そう言って頭を下げたのは、彼の顔をまともに見ることができないから。
こんなに優しい人なのに、この人の手を取れば楽になるのに、それができない私は、どうしようもない奴なのかもしれない。
「謝るな」
「でもっ」
「謝られる意味が分かんねぇんだけど?」
ふっと笑ったような気がして頭を上げると、ふわりと笑う彼の顔があった。
「分かってたから」
「え?」
「お前が、何て言うかくらい分かってた」
私の返事
「けど、言いたくなった。それだけだ」
「桜井……くん」
そう言って笑うのは、私の為。
本当なら笑う場面じゃないのに笑顔を見せてくれるのは、彼の優しさ。
「ごめん」
そう思ったら、やっぱりこんな言葉しか出てこない。