ファンファーレに想いを乗せて

「何やってんの、あずさ」


菜々が怪しい者を見るような目をして聞いてきた。


「何って、願懸け!」

彼の願いが叶い、甲子園に行けるように。アルプススタンドから応援できますように。



「カレンダーに向かって願懸けって、」

あり得ないと言わんばかりに溜め息を一つ溢し、それでも、にっこり笑って菜々は言う。


「じゃ、練習、練習!
先ずは、“ルパン”からね」


それは、彼のテーマ曲


「しっかり願懸けて吹くように」



菜々は、いつから気付いてたんだろう。

私が加藤を好きだということに。



今は、まだ菜々に話していないけれど、夏の大会が終われば全てを話そう。


きっと彼女は、肩をバシッと叩いてにっこりと笑ってくれるだろう。


< 183 / 224 >

この作品をシェア

pagetop