ファンファーレに想いを乗せて
「何やってんの、あずさ」
菜々が怪しい者を見るような目をして聞いてきた。
「何って、願懸け!」
彼の願いが叶い、甲子園に行けるように。アルプススタンドから応援できますように。
「カレンダーに向かって願懸けって、」
あり得ないと言わんばかりに溜め息を一つ溢し、それでも、にっこり笑って菜々は言う。
「じゃ、練習、練習!
先ずは、“ルパン”からね」
それは、彼のテーマ曲
「しっかり願懸けて吹くように」
菜々は、いつから気付いてたんだろう。
私が加藤を好きだということに。
今は、まだ菜々に話していないけれど、夏の大会が終われば全てを話そう。
きっと彼女は、肩をバシッと叩いてにっこりと笑ってくれるだろう。