ファンファーレに想いを乗せて

祈るように両手を胸の前で組んで、彼の姿を凝視する。

大丈夫
加藤なら大丈夫


お願い、打って……




一球目、インコース、スライダー

彼はバットを構えたけれどスイングすることはなく、


“バシッ”

『ストライクッ!』


審判の声が響く。



二球目、ストレート

彼のバットが宙を切る


“カキーンッ!”


「あぁっ!」

応援席がどよめいたけれど、打球は、一塁ベンチ側の上に落ちた。


『ファールッ!』



三球目、高めのストレート

加藤、頑張れ!
加藤……


握りしめた両手に力が入った、その時

“カキーンッ!”


打球は、センター前に弾き飛ばされた。


『ワァー!』

周りの歓声を背に浴びて、彼は走る、走る。一塁ベースを蹴り、二塁ベースも蹴飛ばして、そして頭から三塁ベースに突っ込んだ。


三塁打


『ワァー!』

一際大きな歓声と共に、空高く大きくガッツポーズをした彼。

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