ファンファーレに想いを乗せて


まだ行ける。まだ追い付ける。


『勝利は最後まで諦めないヤツのところに降りてくる』

以前、彼が言った言葉がこだまする。



そう。
まだ誰一人として諦めてなんてないのだから。
だから、逆転だってできる。



だけど、

次のバッターがセカンドゴロで倒れ、2アウト。



あと一人……

向かい側の応援席からは、あと一人コールが聞こえてきた。



あと一人になんか、なるものか。

彼がホームベースを踏んで繋げるんだから。


そう祈るように試合を見る。





“カキーンッ!”


打ち上げた打球は、伸びて伸びて……




“パシッ!”

レフトを守っていた選手のグローブに吸い込まれるように納まった。



試合、終了


勝利の女神は、微笑まなかった。

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