ファンファーレに想いを乗せて





「残念だったね」

「……うん」



放課後の教室で、絵里が紙パックのジュースを渡しながらそう言った。



「絵里」

「ん?」

「ありがと」


今日、授業を抜け出す勇気をくれたのは、絵里だから。

もし、絵里が言ってくれなかったら、彼の姿を見に行くことさえしてなかったと思う。

そして、また後悔していたと思うから。

だから、ありがとう。



「どういたしまして」

にっこり笑って答えた絵里は、ゴミ箱に紙パックを捨てて鞄を持った。


「じゃ、先帰るね」

「うん」

「頑張れ!」

「ありがと」


じゃあね、と手を振って教室を後にした絵里を見送り、自分も鞄を手にして立ち上がった。


あと一つ、やらなけばならないことがある。

夏の大会が終わればやると決めたこと。


彼に、

加藤に想いを告げに行こう


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