ファンファーレに想いを乗せて
けじめ
「久保田がここに来るなんて、珍しい」
「そう?」
「そ。いつもあそこが定位置だっただろ?」
そう言って彼、加藤が見上げたのは、去年まで一緒に笑い合っていた教室の窓辺。
「あ〜、そうかも」
あの頃を思い出して、苦しさや切なさよりも懐かしさと少しの温かさを感じるのは、今日、ここでけじめをつけると決めたからか。
グラウンドには、私と加藤しかいなかった。
今日は、もう、練習もミーティングもないとキャプテンの桜井くんに聞いていた。
だから、わざと彼をここに呼び出した。
彼が一番輝いていたこのグラウンドで、
彼を初めて見たこのグラウンドで、
彼を好きになった、この場所で、けじめをつけたかったから。